清くて正しい社内恋愛のすすめ

最初の真実

「どういうことか、説明してもらおうかしら」

　目の前に忠則を立たせると、祖母がベッドの上から厳しい声を出す。

　忠則はただ青い顔をして、その場に立ち尽くしていた。

　穂乃莉は少し離れた所から二人の様子を伺う。

　忠則はひどくやつれており、以前に会った時のような自信がみなぎる顔つきは見る影もなかった。


「忠則。久留島不動産が、ここら辺の土地を買い漁っているというのは、本当かしら？」

　祖母が怒りを無理やり抑え込んだ顔で穏やかに話しかけるが、忠則は一言も発しない。

　口をぐっと横に結び、硬い表情でうつむくばかりだ。


　しばらく沈黙が続いた後、突然祖母がベッドサイドのテーブルに手の平を叩きつけた。

「どういうつもりなの！」

　バチンという大きな音が響き渡り、忠則が「ひっ」と悲鳴を漏らした。


「と、投資で失敗して……」

　忠則が泣きそうな顔で、ようやく小さく口を開く。

「投資！？」

「うまい儲け話があるって聞いて、不動産の資金をつぎ込んだ……。でも……それが詐欺だとわかって……気づいた時には、どうしようもない状態で……」

　忠則はそこまで言うと、泣き崩れるように床に突っ伏す。
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