清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉が眉をひそめると、白戸はにっこりと口元を引き上げた。

「東雲社長ですよ。随分と久留島さんにご執心のようでしたから」

「あなた、何言ってるの?」

「別に。でも私、教えちゃったんですよねぇ。東雲社長に……」

「何を……? 何を教えたっていうの……?」

 白戸はじらすように穂乃莉の顔色を伺っている。


 しばらくして白戸は、まるで小馬鹿にするかのようにくすくすと肩を揺らした。

「契約恋愛のことです」

 その言葉を聞いた途端、穂乃莉ははっと目を見開く。


 ――東雲さんが契約恋愛のことを知っていたのは、加賀見から聞いたんじゃない。白戸さんから聞いたんだ。


 白戸は自分の恋愛のために、キスしたと噂を広めたり、社内研修を総務部長にけしかけたりしただけでなく、裏でこんなことも動いていたのか。


「東雲社長とはどうなったんですか?」

「どうもなっていないよ」

「えぇ!? 東雲社長も、もうちょっと頑張ればいいのに。意外と押しが弱いんですねぇ」

 そう言いながら口を尖らせる姿に、穂乃莉は耐え切れずに腕を伸ばすと、白戸の手をぐっと掴んだ。
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