清くて正しい社内恋愛のすすめ
 離れ離れになった兄弟が、再び一緒になって、力を合わせる事を願った加賀見の母親。

 せっかく東雲と和解できたというのに、結局兄弟は対立する立場になってしまう……。


「大丈夫。穂乃莉は何も気にしなくていいから」

 加賀見は優しくそう言うと、穂乃莉の手をギュッと握る。

「母親には俺からちゃんと話をする。だから安心して。それに……」

「それに?」

「少し気になってることもあるんだ」

「気になってること?」

「うん……」

 加賀見は珍しく口ごもると、少し考え込むような様子を見せる。


「もしかしたら、東雲社長はまだ母親のこと……」

 加賀見がそう言いかけた時、軽快なメロディと共に車内アナウンスが流れだした。

「いや、何でもない。ほら、降りるぞ」

 加賀見は小さく首を横に振ると、穂乃莉のキャリーケースを手に立ち上がる。

「う、うん」

 穂乃莉も慌ててパソコンを鞄にしまうと、加賀見の後について立ち上がった。


 さっきの加賀見の口ぶりは気になる。

 でも家庭の事情でもあることだ。

 もうこれ以上は聞かない方が良いだろう。

 穂乃莉は気持ちを切り替えると、加賀見と一緒に駅に降り立った。
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