清くて正しい社内恋愛のすすめ
「久留島のお嬢様のお前を本気で手に入れようと思ったら、生半可な気持ちじゃ認めてもらえないと思った。だから、最初にここに来たんだよ」

「……加賀見」

 穂乃莉は加賀見のジャケットの襟元を、両手でぎゅっと握り締めると、その胸にコツンとおでこを当てる。


 穂乃莉の婿選びに立候補する、と言って祖母に会いに来ていた加賀見。

 クリスマスイブの加賀見のキスの中に、こんなにも深い想いと覚悟が詰まっていたなんて、思ってもみなかった。


「ねぇ……。加賀見は本当に、久留島の家に入るつもりなの?」

「当たり前だろ? じゃなきゃ見合い写真なんて持って来てない」

「ご両親は? お母さまは、何て言ってるの……?」

 穂乃莉は伺うように加賀見の顔を見上げる。

 加賀見は少し間をおいてから、穂乃莉の瞳をまっすぐに見つめた。


「両親には全部話したよ」

「え? いつ?」

「この前の出張の後、戻ってから。東雲には行かないって話と一緒に」

「お母さまは、何て……?」

「俺に大切な女性(ひと)がいるってことは、心の底から喜んでくれたよ。でも、東雲に行かないって話は、なかなか『うん』と言ってくれなかった。よっぽど東雲社長のことが、心残りなんだろうな」

「そんな……」

 穂乃莉は小さく声を出すと下を向く。
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