Dying music 〜音楽を染め上げろ〜





毎日の練習の成果もあってかギターは順調に伸びて、バンドマンさんと対等にセッションできるくらいにはなった。だが、弾き語りや歌唱はまだまだ。まず、歌いながら弾くことに慣れないといけなかった。2つのことを同時にする、弾き語りはギターに慣れるよりも時間がかかったかもしれない。


「今の夏樹に足りていないことがある。」


ステージのあと師匠に言われた。


「感情だ。」



「お前、曲の中の歌詞の意味を考えたことがあるか?」

「ないです。」

「夏樹は音程や裏声の使い方は少しずつ上達している。そこにもう一つ、加える。歌うとき、弾くときに喜怒哀楽の感情を乗せるんだ。」



今まではシンガーさんの真似をして歌っていたから歌詞の意味なんて考えたこともなかった。音程を正確に捉えることも大切だが、意味を伝えるということも重要。ただ音程が合っているだけではロボット状態だ。



そのときの僕はまさにその状態で、正確に歌い上げなければ、という気持ちの方が強かった。


「音楽には人の心を動かす力がある。人の考え方や気持ちを変えることができる。支えることができる。救うことができる。」


人の心を動かす力…。



そこから歌詞の意味を考えながら歌うようになった。


「嬉しい」って一言にも何で嬉しいのかな?この人にはどんなことが起きたのかな?って想像する。失恋の歌を歌うときは恋の懐かしさ、その時の楽しさを思い出すような感情で。どうしてこの2人は別れたんだろう、どっちが振ったんだろう。そんな細かい部分も思い浮かべた。




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