Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
「おーい、お疲れぇ~」
涼が手を振りながらこちらに来る。
「接戦だったね!夏樹めっちゃ速かった。」
色葉が水筒を持ってきてくれた。
「全然。」
「でも赤軍2位だよ!」
赤軍は惜しくも1位には届かず、2位フィニッシュ。怜斗たちは3位。最後の最後ままで勝敗分からなかったくらい白熱していた。先生たちも叫んでいたし。
「それはみんながあとから挽回してくれたからで、」
「夏樹ちゃんが距離詰めてくれたおかげだよ!」
未来ちゃんがそう声をかけてくれる。ちょっと恥ずかしいな。あ、そういえばあの約束。
「怜斗、約束ちゃんと守ってね。」
後ろにいる怜斗にそういう。
「~~!わぁかったよ!フラペチーノだろ!カスタムでも何でもしろよっ!」
怜斗は若干悔しそうに唸った。やったね。練習帰りに奢ってもらおう。カスタム何にしよう。
そっからは閉会式。赤軍は総合順位3位だった。最後のリレーがいい加点要素になったのかな。
「夏樹ちゃーん!」
閉会式後、遠くから名前を呼ばれて振り返る。そこにはゆっくり歩いてくる涼香ちゃん。そして
「走ってくれてありがと~う~!マジでありがとぉ~!」
と、抱きしめられる。その様子を見てクラスの子たちが笑う。何か恥ずかしいな…。
でも
少しずつだけれど、生活に慣れてきた気がする。こういう学校行事一つ一つ、どうでもいいような会話にいちいち感動している自分がいる。
大っ嫌いでトラウマの塊だった学校という場所が、ちょっと楽しいと思える。
1年前では考えられなかった感情。
灰色だった生活に、色がつき始めている。
新しい、知らない出来事が次から次へと起こる。
何ていうんだろう……新鮮さっていうのかな、面白いなって思う。
………………………
「夏樹~まだ起きてるの?今日は早く寝て疲れとりなさーい。」
「はーい。」
寝たいのは山々だけれど、今すぐ文字に書き起こさないとこの感情を忘れてしまう。
覚えているうちに書かないと。