ミステリアスな王太子は 花嫁候補の剣士令嬢を甘く攻め落とす
本当の気持ち
「お姉様!」
「リリアン!無事だった?」
「ええ。あの後、大通りまで出たところでお父様達に保護されたの」
「そう、良かった」

王宮に戻り、近衛隊の詰め所にいたリリアンと、クリスティーナは固く抱き合う。

「お姉様は?どこも怪我はない?」
「大丈夫よ」
「王太子様が駆けつけてくださったのね。私が、お姉様が一人で残っているとお伝えしたら、血相を変えて飛んで行かれたのよ」
「そうなの?」

(血相を変えて…って、フィルが?)

なんだか想像がつかないなとぼんやりしていると、急にリリアンが、あっ!と声を上げて深々とお辞儀をした。

ん?と振り返ると、フィルがにこやかに歩み寄って来る。

「気分は落ち着きましたか?」
「あ、はい!あの、わたくしのような者に王太子様自らが助けに来てくださって。本当に畏れ多く、恐縮しております。ありがとうございました」
「いえ、あなたが無事で本当に良かった。それにしても、まだ若いのにしっかりしてるね」
「とんでもない!言葉遣いも、王太子様にはなんと申し上げればよいのか分からず…。無礼をお許しください」
「いやいや、姉上よりも妹のあなたの方がよほどちゃんとしているよ。ねえ、クリスティーナ」

話を振られてクリスティーナは憮然とする。

「それは嫌味かしら?フィル」
「あ、分かった?」

むーっとクリスティーナがフィルを睨むと、リリアンは慌ててクリスティーナの腕を引く。

「お姉様!王太子様になんてことを…。申し訳ございません、王太子様。姉は、その、一風変わったところがございまして、決して悪気がある訳ではないのです。どうかお許しを…」
「あはは!君が謝る必要はないよ。それにしても、こんな姉上を持つと妹は大変だね。えっと、リリアンと言ったね?今夜はここに泊まるといいよ」

ええ?!とリリアンは目を見開く。

「わたくしが、王宮に…ですか?」
「ああ。姉上と積もる話もあるだろう?クリスティーナ、君の部屋に泊まらせてあげるといいよ」
「いいの?」
「もちろん」

クリスティーナはリリアンと顔を見合わせて笑顔になる。

嬉しそうなクリスティーナの様子に、フィルもふっと笑みを洩らした。
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