私と先輩の甘い放課後

私と先輩の甘い放課後



 放課後。チャイムが鳴り響く。


 校庭では運動部の賑やかな声。音楽室からは吹奏楽部やオーケストラ部の合奏の音。


 帰りのホームルームが終わって、少し経った頃。


 私は生徒会室で一人、次の生徒総会の資料をまとめていた。パソコンは得意ではないけれど、文字を打つのは好きだ。


 私、春原 心陽(すのはら こはる)は、生徒会の副会長を務めている。一年から生徒会に所属し、二年目である。生徒会の仕事が好きというのもあるけれど、生徒会になんとしても所属したい理由があった。


 カタカタと子気味良いキーボードの音だけが、静かな生徒会室にこだまする。


 紅茶でも入れようかな…。


 まだまだ資料の作成には時間が掛かりそうだ。少し休憩しよう。


 生徒会の先輩の誰かが持ち込んでくれた電子ケトルにお水を入れ、コンセントを繋いでスイッチを入れる。戸棚に入れていた紅茶のティーバッグを一つ取り出し、マグカップに入れた。


 するとカラカラカラと音がして、生徒会室のドアがスライドした。


「お疲れ様」

「あ、夏樹先輩!お疲れ様です」


 爽やかな挨拶とともに生徒会室に入ってきたのは、生徒会長の三年生、葉月 夏樹(はづき なつき)先輩。


 先輩はニコニコと笑顔を浮かべながら、生徒会長席へとやってきた。生徒会長の座る席だけは、私達の座る普通の椅子と違って、なんだか少しいい椅子だ。どこかの書斎とかに置かれていそうな大きな椅子。とても座り心地が良さそう。


「今日は、春原さん一人?」

「はい、皆さん各々予定があるとかで」


 この時期の生徒会は特に忙しくない。部活と兼任している生徒会メンバーもいるので、今はそっちに行っているのだと思う。


「私は生徒総会の資料を早めに作っておきたかったので」


 そう答えたのと同時に、電子ケトルがプシューと音を立てた。どうやらお湯が沸いたようだ。


「先輩の紅茶も淹れますね」


 もう一つマグカップを取り出し、紅茶を入れる。


「ありがとう」


 先輩の穏やかな声が私の背中にかかる。そんな些細なことで、私はものすごく嬉しくなる。

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