踏み込んだなら、最後。
一日千秋




「湯冷めするぞ」


「……佳祐お兄ちゃん」



1階のテラスからは施設の門が見える。

人が通ればここから分かるから、あの日から私は毎日こうして夜遅くまでテラスに出ていた。


保育園組と小学生組は完全に寝て、中学生組と高校生組もそろそろだと注意される時間。


穏やかに声をかけてきた佳祐お兄ちゃんは、それでも頑なに室内に戻ろうとしない私にそっと投げかけた。



「心配なのは分かるけど、シロとはちゃんと連絡は取れてるから安心しろって」


「えっ、取れてるの…!?」


「ああ。…既読はついてる」


「……それ、取れてるって言わないよ…」



既読があるだけいい、とも言えるけれど。

メッセージは返信があってこそ成り立つものだ。


佳祐お兄ちゃんは本当にシロちゃんが友達のところに行ってると思ってるの…?


私はやっぱりそうは思えないよ。



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