王女の身代わり婚未遂 ~侍女の身代わりになってお見合いをしたら狼に囲まれました~
「なぜ指笛を? まさか」
 アルフレッドが顔をあげると、犬たちが集団で走って来るのが見えた。
 ハーディをはじめとして大型犬が二人に飛びつく。衝撃でアルフレッドがエルシーから離れた。

「なぜ呼んだのですか!」
「……」
 答えず、エルシーは犬に紛れて逃げようとする。

「逃がしませんよ」
 アルフレッドはエルシーの腕をつかみ、ぐい、と引っ張った。

「ばう!」
 ハーディがじゃれついてとびかかる。

「あ!」
「危ない!」
 エルシーは倒れそうになり、アルフレッドが彼女を抱きかかえた。
 くるっと身を翻し、アルフレッドが下敷きになって芝生の中に倒れる。

「大丈夫!?」
 だが、アルフレッドはなにも答えない。瞳は閉じられ、ぴくりとも動かない。

「みんな、お座り!」
 騒ぐ犬たちを、エルシーは座らせた。
 アルフレッドはまだ動かない。頭を打ったのだろうか。

「すぐにお医者様を!」
「ダメですよ」
 起き上がろうとしたエルシーの腕を彼が掴み、引き寄せた。

「こういうときは姫君がキスをして目覚めさせるものです。そのために気絶のふりをしたのに」
「なによそれ! 心配したのに!」
 アルフレッドは体をくるっと入れ替え、エルシーを芝生に押し倒した。

「押し倒されるのもいいが、やはり男としては押し倒したいな」
「狼よりあなたのほうが危ないわ」
「心外です」
 抗議するエルシーの目に、くすくすと笑うアルフレッドの顔が視界いっぱいに映る。青空を背に、彼の笑顔がいっそうのことまばゆい。

「愛しています」
 彼の言葉に、胸がときめく。
 芝生の青い匂いが、よけいに胸をドキドキさせる気がした。

 彼の瞳が近付く。
 エルシーは目を閉じた。

 青空の下、イフェイオンはきらめきを増して咲き誇っていた。



* 終 *
< 30 / 30 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:4

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
星森耀理(ほしもり ひかり) 平凡な書店員。 彼氏と元親友に裏切られて傷心中。  ×  月嶺史弥(つきみね ふみや) 大人気作家。 三年前から耀理を愛し、彼女のために作品を書き続けている。 彼氏にふられた耀理(ひかり)は傷心のままサイン会に行く。 推し作家にプロポーズされた耀理は作品の再現シーンだと気付いて心躍らせる。 ヒロインの言葉で承諾のセリフを返したところ、作家は「婚姻が成立だ」と叫んで仮面をはがす。 現れたのは、三年前に耀理に暴言を吐いた男だった。 激重の彼の愛を拒否する耀理。 元彼や元親友の襲撃から守ってくれた彼に次第に引かれていくのだが……。
表紙を見る 表紙を閉じる
柚花は宝石店『パリュール』の副店長をしている。 恋人を取られ、店長が入院して公私ともに大変。 そんなとき憧れだった人が「店長代理」としてやってきて……。 9月30日完結。 お読みいただき、ありがとうございます! 24/10/7 中短編部門で1位を獲得しました! 初の1位に感無量です! みなさま本当にありがとうございます!!! 25/1/30 めちゃコミック×LScomic×魔法のiらんど漫画原作コンテスト 「エリート上司との偽装恋人」部門にて 佳作を受賞いたしました! ありがとうございます!
表紙を見る 表紙を閉じる
第2回ベリーズ文庫デビュー応援コンテストにて .。゚+..。゚+. 大賞 .。゚+..。゚+ を頂きました。 みなさまありがとうございます。 ☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。 24/11/10にアンソロジー発売! 『悪い男の極上愛』に 『世界最悪の外交官に偽装告白したら 溺愛が待っていました』 とタイトルを変更して収録。 書籍では大幅に加筆修正して、 ヒーローはもっとかっこよく、 溺愛シーンも増やしています! ☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。 朱鳥(あすか)は売れないウェブライターだ。 迷子を保護しようとしたとき、悪徳外交官と知り合う。 幼女誘拐で世界に悪名を馳せて 世界中から敵視されている外交官だ。 外交官特権で逃げたので話題になった。 契約更新の特ダネのために彼に近付くのだが、 彼の甘い態度に朱鳥はよろめく。 彼は本当に誘拐をしたのだろうか。 真実はどこにあるのだろうか。 そんなとき、元カレが怪しい動きをして……。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop