わんこ
「お前、絶対わざとだろ!」
「え、何のこと?」

 恵梨香は首を傾げてしらを切った。

「まぁいいけど」

 怒っているのかと思えば、何処かホッとしているようにも見える。

「啓汰、わんこ好き?」
「おお、すげぇ好き。俺のマンションはペット禁止だけど、実家は子供ん時からずっと犬飼ってるし、しかも、たまにしか帰んねぇ俺に一番懐いてる」
「へー、そうなんだぁ」

 初めて知った啓汰の犬好きエピソードに、思わず頬が緩む。

「あのね、実は私も、こう君と同じミニチュアピンシャー飼いたいなって思ってるんだけど、どうかな?」
「おー、いいじゃん。てか、何で俺に聞くんだよ」
「何でって……」
「じゃあ、俺がもし犬は苦手だって言ってたらどうすんだよ」
「飼わない」
「何で」
「だから、それは……」

 恵梨香は口ごもった。
 
「もしかして、俺と同棲しようってことか?」
「な、何でそうなるのよ! そこまで言ってないじゃん」
「何だよ、嫌なのかよ!」
「そうじゃないけどさぁ……」

 少しだけ素直になってみた。

「うちにわんこを迎えて、啓汰を迎えられなくなったら困るなーと思って……一応先に聞いただけ」
  
 見開いた啓汰の目が一瞬左右に揺れた後、三日月になった。

「任せとけ! 俺もちゃんと世話するから」

 あの日と同じ啓汰の頼もしい言葉に、胸が高鳴る。
 啓汰が向ける眼差しは、あの頃と少しも変わっていない。

 もっと早く素直になっていれば良かった。

 我が家に先に迎えるのは、ずっと待たせていた金曜日のわんこになりそうだ。





【完】
< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

もう一度会えたなら
凛子/著

総文字数/15,747

恋愛(純愛)26ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
中島美紀と向かい合って座る、スーツに眼鏡の真面目風サラリーマン。 彼は、美紀の友人でも恋人でもない。 この店で相席している常連客――藤沢海斗だ。 完結&公開 2022.6.3 さとみっち様 レビューありがとうございます。
それでも愛がたりなくて
凛子/著

総文字数/8,029

恋愛(純愛)10ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
無口でシャイな夫・斎藤賢治と、そんな夫が大好きな妻・塔子。 食の好みが合い身体の相性もいい二人の幸せな結婚生活が、あることをきっかけに狂いはじめる。 完結&公開 2022.5.20 さとみっち様 素敵なレビューありがとうございます。
愛のかたち
凛子/著

総文字数/28,862

恋愛(純愛)69ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
情けない男の不器用な愛。 公開開始 2022.11.5 完結 2022.11.12 鮭ムニエル様 さとみっち様 sadsukgc様 チャマ様 かしらぎ様 レビューありがとうございます。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop