まどろみ3秒前

プロローグ


まるで、水の中にいるみたいだった。

足掻いても足掻いても、掴めない水。空を切る手。動かない足。息ができず泡吹く口。沈んでゆく体。水が、身体中を浸透していく。

苦しい。痛い。辛い。ああ、息が出来ない。酸素を体が欲している。水には、酸素がない。吸っても、口の中に水が入るだけ。


そんな、水の中みたいな。

そんな、いつだってまどろみの中にいた。

生きている感覚がしなくなった。











「待ってるから、ずっと」



まどろみ3秒前







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