まどろみ3秒前

「いや、不安になるとかどうでもいいんで聞かせて下さい」


私は笑みを浮かべて、医者がどんなに首を振っても尋ねた。聞きたかった。不安になるとか、そんなのどうでもよかった。


「…天塔さん、ごめんそれは」

「聞かせて下さい」


はぁ…と医者は、やれやれといった感じでため息を漏らした。

「…5年だった。その人は、眠りについて5年後、やっと起こされたんだ。起こしてもらわなければ、もっといってた」


お母さんはどうして言ったんだ、と言わんばかりの顔をしていた。

私は笑みを浮かべて立ち上がり、「ありがとうございました」ときちんと感謝を述べて診察室を出ようと扉をスライドさせた。


「あ、天塔さん!」


私が振り返ると、若い医者は優しく笑みを浮かべた。


「無理、しなくていいからね」


本当は、心が刃物で刺されたように痛かったのに、それを隠して私は平常に笑った。


私の病気は、たった1人の王子様に起こしてもらえば起きることができる。その病気は治らないけど、治せる。

たった1人を、見つけ出すことができたら。








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