まどろみ3秒前







「なにしてんの?」


はっと声がする方に顔を向けると、同じクラスの男子が立っていた。着ている制服のシャツには、真っ白で汚れ一つと付いていない。

私は、持っていた紙切れを机の中に入れた。教科書やノートが詰め込まれていて、机の中に無理矢理押し込む形になってしまった。

紙は破れてはいないだろうか、なんて心配する余裕もなく、私は笑みを浮かべる。


「あーごめんごめん!何でもない!」

「口パクパクさせたりして。えなに?まさかお前、手紙で告白でもされた?」


彼は私をバカにしたように鼻で笑った。いつの間にか下がっていた口角を慌てて上げる。


「いやそんなんじゃないない!ごめん、ほんと何でもないからさ」


「笑える」と言いながら机上に数学のノートを投げつけるように乱暴に置いてきた。

その事に、「あーごめ、」と中途半端に言って行ってしまった。

彼は、どうやらノートの配り係らしい。

鼻で笑われたのも、乱暴に投げられたのもあるけれど、彼は配り係を全うして果たそうとしているのだ。そう、思うようにした。

今日も、私のことを別にいじっていいんだよアピールのために笑顔を貼り付けていたが、効き目はあるのだろうか。ないかもしれない。

目を合わして笑えていただろうか。私は自然に話せていただろうか。そんなことを最近は、人と接するたび心配になる。
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