私と彼の溺愛練習帳
 甘いときめきよりも、切ない気持ちが胸に広がった。
 彼は若い。
 たとえ一時期つきあったとしてもすぐに飽きて、若い子に惹かれるだろう。
 遠くない未来に喪失が確定している恋なんて。

 トイドローンを見た。
 小さなそれは、今は音もなく彼の手の中にある。
 コントロールできなくて、小さな風にすら流されて。
 そうして、ついには墜落して。

「キス以上、してくれる?」
 雪音はぽつりと言った。
「どうしたの急に」
 閃理は驚いて体を離し、彼女を見た。
 雪音は黙ってうつむいたまま、ぎゅっと拳を握る。

「溺愛、してくれるんでしょう?」
「もちろん」
 閃理は彼女の額に口づける。
「たっぷり溺愛するよ」
 閃理はゆっくりと雪音をソファに倒した。
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