私と彼の溺愛練習帳
 ソファに倒された雪音は、ぎゅっと目をつむった。
 閃理はゆっくりと彼女に口づける。
 雪音は体を固くした。彼との深いキスは初めてで、されるがままにおとなしくしていた。
 閃理は舌を絡ませ、丁寧に雪音を味わう。
 それから、体を離した。

「本当は嫌でしょう?」
 問いかけられ、雪音は目を開けた。
「キスでわかるよ」
 閃理は覆い被さるようにして雪音をみつめている。

「また思い詰めた顔をしてる。一人で考え過ぎないで」
 彼はそっと彼女の頬を撫でる。
 雪音はたまらなくなった。こんな年下に見抜かれて心配されて。優しさに甘えて、依存なのか愛なのかもわからなくなって。

「大丈夫だから」
 雪音は目をそらして言った。
「無理してる」
「してない」
「あなたが嫌なことはしなくない」
「嫌なんて言ってない」

「じゃ、いいこと日記に書いてくれる? これからすること」
「それは……」
「書いてくれないの? やっぱりダメじゃん」
「書くわ」
 言い張る雪音に、閃理は困ったように息をついた。
 立ち上がると、雪音をお姫様のように抱きかかえた。

「ちょっと!」
「あなたはなにもしなくていいから」
 ささやいて、彼女を寝室のベッドに運んだ。
 ゆったりと横たえられ、雪音は緊張で体を強張らせた。

「怖がる雪音さんもかわいいよ。今日はあなただけを気持ちよくしてあげる」
 閃理がベッドに上がる。
 彼は宝物を包むように彼女に覆い被さり、また唇を重ねた。
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