魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

4.4

 イーダは、息がかかりそうなほどの至近距離で魔王と見つめ合った。

(昨夜のあのときと一緒……箒の上で……)

 呼吸するのも苦しくなるほど心臓がドキドキした。

 だというのに、魔王は『ありがとう』とあっさり受け取ると瓶の中身を調べ始めた。

(なーんだ……って何? えっ、私、今がっかりした?)

 イーダは慌てた。

(私、キスしてもらうことを期待してた? 身代わりの分際で? しかも特効薬だけ作ってもらったら、魔王様をダマしてバイバイしようとしてるくせに?)

「ほかの瓶も見ていい?」

「えっ?」

 思いのほか大きな声が出てしまった。

「もしよければ、ほかにどんな薬草があるのか見せてほしいんだけど……でも、無理にお願いするつもりはないよ?」

「あっ、いえ。問題は全くないです、どうぞいくらでも見てください!」

(落ち着け、落ち着け……)

 隣で魔王は瓶をひとつひとつ覗き込んでいった。
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