魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 イーダはベッドのへりに腰かけ、自分が置かれている状況を考えた。

(私は今軟禁されてる状態ってことで間違いないよね。箒で窓から逃げることは可能だと思うけど……)

 そしてイーダはすぐに魔王のことを考えた。

(箒で魔王様のところに行くのは無理かもしれない)

 謁見の間に案内されて、今はどうしているのだろうか……

 まさか魔王相手に侮蔑の視線は投げていないとは思うが、胸がザワザワとして落ち着かない。

 イーダは自分の肩を抱いた。

 何かよくないことが起きている気がする。

「魔王様……」

 届くはずがない。

 そうと分かっていても魔王に呼びかけたとき、イーダの体が魔法で包まれた。

「えっ?」

 その魔法が何であるか、イーダは知っていた。一昨日と昨日で何度も使われた。

 だから驚いたのは魔法にではなく、そのタイミングのよさのほうにだった。

(まさか私の声が聞こえた……?)

 魔王による転移魔法で、イーダはあっさりと軟禁されている部屋から抜け出していた。

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