魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 けれど、正式に唱えるは斑紋死病が収まったときでいいのだ。

(今はみんなでこんなふうに笑い合えれば……)

 ところが、魔法陣の中央から小さな煙の渦が発生した。

 そして、イーダの握りこぶしサイズくらいの何かが現れた。

「えっ、嘘……」

「どうしたの? きゃっ!」

 魔法陣の上の黒い物体に視線が集中した。

「イーダが召喚しちゃってる!」

「でも……それ何?」

 イーダは自分が召喚したものをしげしげと見つめた。

「ね、ネズミ……かな?」

「だけど、角が生えてない!?」

「しっかり2本も生えてる!」

 イーダを除いて大騒ぎになった。

「それ、魔界とかから何かヤバいのを召喚したんじゃないの?」

「大魔女……はいないから、大ばば!」

「私が呼んでくるわっ」

 出入口の近くにいた魔女がつまづきながら、飛び出していった。
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