先日、芸能界を引退した推しが殺し屋になっていました
推しに貢がせるなんて言語道断…!
【つぼみside】

「うわ、ボロ……」

お昼ご飯を食べ終わり、私の家まで送って下さったキセキ様。

目の前に立ちはだかる私のボロアパートを見上げ唖然としていた。

塗装は所々剥がれていて、私の部屋である202号室に続く階段は今にも壊れてしまいそうにミシミシとうなっている。

次台風が来たら確実に壊れる。そんなところだ。

あぁ…キセキ様のおうち…
シャンデリア…、ピカピカフローリング……
最高だったな…。

「す、す、すみません!お目汚ししてしまって!!」

無礼にも程がある!

わざわざ電車賃まで出して下さり、一緒にここまで来て下さったのに挙句の果てにはこんっな、キラッキラな瞳にこんっなボロッボロのアパートを映させるなんて…っ。

ヲタクとしてどうかしてる…!

「こんなボロアパートの家賃も払えないのか、お前は…」

「だって…っ、推しのグッズの方が​────」

「はいはい、またそれか。もう聞き飽きたって」

キセキ様が呆れたように手をヒラヒラと振ったその時。背後から声がかかった。

しゃがれた女の人の声だ。

「あ、齋藤さん…!!」

「…お、大家さん………」

一瞬にして空気が張り詰めるのが分かった。

1階に住む大家さんだ。

大家さんは険しい顔して、ズンズンと私に迫ってくる。

そして人差し指をピンッ、と立て、怒鳴り散らすように言った。
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