ずっと特別なマブダチで
 それから私は、一週間に一度はその川へ訪れていた。家から数分で着くから本当に有り難い。学校で先輩と会うことが無いから、この時間が唯一の楽しみだ。

「あ、咲良ちゃん」

「葵先輩、こんにちはっ」

 私達は、お互いを名前で呼ぶようになった。名前を呼ばれる度に胸が高鳴るし、この名前で良かったなと思う。

「今日、すごい暑いよね。早く夏終わらないかな……って、俺一番好きな季節春なんだけどね」

「確かに、先輩は春のイメージがあります」

 こういう他愛もない会話でも、私は幸せな気持ちになる。――先輩はどうしてこの川にいつも来るのだろう、という疑問があるが、出会ってからずっと聞けずにいた。

「咲良ちゃんも春ってイメージ。誕生日いつなの?」

「三月三十日です」

「お、俺は三月十五日だよ」

 先輩のことを知れて私は本当に嬉しい。一緒に話す時間は少ないけれど、幸せな気分になる。

「あ、じゃあそろそろ行くね。今日親戚の集まりがあるんだ」

「あ……はい……」

「……そんな顔しないで」

――えっ?!

 先輩は照れくさそうに俯いて言った。

「またね」

 私は、きっと今晩は寝れないだろう……。
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