友達以上恋人未満の片想い




「ごめん遼…。ついスイーツタダ券に釣られちゃって…」



大皿を手にした実里が向こう側でスイーツを吟味している先輩をちらりと見て謝ってきた。



「…なんでおまえが謝るんだよ。いつまでも気まずそうにしなくていい。もうあいつは過去のことだろ」


「…うん、そうだよね」



そうだ。大丈夫。


実里は別れたいと言ってきているわけじゃないし、キスをしたあの日からなんとなくだが恋人らしくなってきている気もしていた。


だから大丈夫だ。俺は実里の彼氏なんだから。



「実は俺、彼女と別れたんだ」



ミルクレープを食べていた先輩が、ふと俺と実里の反応を探るように見ながらニコニコと笑ってそう言った。



「…そ、そうなんですね」


「へぇ」



知ってはいたけど、実里が知らないふりをしたから俺も知らないふりをする。



「彼女にね、振られたんだ。私のことが好きじゃないくせに、好きなふりをしないでって。俺の気持ちを見透かされてたんだ」



実里はなんでもなさそうな顔をして、ちびちびとチョコレートケーキを食べていた。
< 63 / 74 >

この作品をシェア

pagetop