強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「それを……裕大(ゆうだい)様が庭小屋に閉じ込めて頭を冷やしてもらえと」


 ──護衛を使ってボロボロにしてから?

 そう嫌味を言ってやりたくなるのをグッと抑える。

 田中に当たったって意味はないのだから。


「……そう、叔父様の鶴の一声というやつね」

「奥様には話しておりませんが、せめてお嬢様には報告をと思いまして」

「お母様は今シンガポールですもの。あそこからどうこうするのは難しいでしょう」

「おっしゃる通りです」


 お母様は仕事で、一年前からシンガポールで暮らしている。

 東南アジア方面の事業を担当するためだ。

 元から海外出張が多く、日本に戻ってくるのは年に数回程度で、片手で数えられるほどしか直接会えていない。

 それでも数日に一度はビデオ通話で話せるし、寂しさを感じたことはなかった。

 お父様が倒れたときも、お母様は仕事中だというのにすぐ電話してくれた。



< 26 / 182 >

この作品をシェア

pagetop