強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「それを……裕大様が庭小屋に閉じ込めて頭を冷やしてもらえと」
──護衛を使ってボロボロにしてから?
そう嫌味を言ってやりたくなるのをグッと抑える。
田中に当たったって意味はないのだから。
「……そう、叔父様の鶴の一声というやつね」
「奥様には話しておりませんが、せめてお嬢様には報告をと思いまして」
「お母様は今シンガポールですもの。あそこからどうこうするのは難しいでしょう」
「おっしゃる通りです」
お母様は仕事で、一年前からシンガポールで暮らしている。
東南アジア方面の事業を担当するためだ。
元から海外出張が多く、日本に戻ってくるのは年に数回程度で、片手で数えられるほどしか直接会えていない。
それでも数日に一度はビデオ通話で話せるし、寂しさを感じたことはなかった。
お父様が倒れたときも、お母様は仕事中だというのにすぐ電話してくれた。