強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
そんな親切さを装って、わたくしを締め出そうとする。
大人だったら、こんな歯がゆい思いもしなかったのだろうか。
仮定の話を考えてもどうしようもないけれど、考えずにはいられなかった。
「……お嬢様、差し出がましいとは存じますが」
田中が深々と頭を下げる。
「奥様に戻っていただき、施設を救済する手立てを──」
「ダメよ!」
いつにないわたくしの大声に、田中は肩を跳ねさせた。
「……東南アジア方面の事業は、久保寺家が十数年かけて進めてきた仕事です。その要たるお母様を呼び戻すなど、許しません」
「お嬢様、しかし──」
「施設についてはなくならないよう、わたくしが動きます」
田中がハッと顔を上げた。
「そもそも久保寺家の娘であるわたくしが、ちゃんと把握しておくべきでした」
「よろしいのですか?」
「よろしいも何も、あなた、同情して私に頼みに来たのでしょう?」