強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「……おふくろさん、家にいないの?」
……ああ、聞かれていた。
聞かれていたなら隠しても仕方ない。
「お母様は仕事で海外にいますの」
「そうか……親父さんは」
「お父様は入院中です」
淡々と、まるで報告書でも読み上げるように伝える。
藤太はますます複雑そうな顔をして、最後にはうつむいてしまった。
「……何つーか、最悪のタイミングで来ちゃったんだな、俺」
「だからってあんな目に遭わせていいことにはなりませんわ」
片手で目元をおおった彼に、すかさずあなたのせいではないとフォローを入れる。
「ほら、あれだ。嘆願書とか、なんかこう正式な抗議みたいなやつをやればよかったんだ」
「それはそうでしょうが、やってしまったことはもう取り消せません」
藤太の中では、大変な状況の中に何も考えず飛び込んでしまったという罪悪感があるのだろう。
気持ちが落ち込んでしまっている。