この結婚には愛しかない
7.-side伊織-指輪の真実


【side 伊織】



金融だけでなくエレクトロニクス産業が急加速しているここシンガポールで、M&Aで吸収合併を検討している企業の現地調査。これが今回の業務だ。

国内であらかじめ数社をピックアップしていて、トップとのアポもとっている。期限は2週間。その間、ホールディングスのシンガポール支社に拠点を置く。

日本から約7時間、時差は日本が1時間進んでいる。今は観光のベストシーズンの11月で、時刻は17時を過ぎているが暑くて明るい。だいたい日の入りは平均して19時辺りか。


マリーナベイエリアにあるホテルに向かいながら、目の前に広がる景色をスマホのカメラで撮影した。

彼女と共有したくてメッセージアプリを開くと、メッセージの受信に気付き笑みがこぼれる。


『神田さんおはようございます
今日は朝から雨が降っていてとても寒いです
神田さんは今どちらにいらっしゃるのでしょうか?
そちらは雨が降っていますか?
体調を崩されませんように、
どうぞご自愛くださいませ』

「(こっちはすごく暑いよ。君こそ風邪ひかないで)」


心配そうに俺を見上げる、あの愛らしい顔を思い浮かべながら、撮影したばかりの画像を送信した。
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