この結婚には愛しかない
「この指輪も外さなきゃですね」

「そうだね。本当は1秒だって外して欲しくないんだけど」

「なんだか寂しいです」

一気に寂しくなった左手の薬指を見ると、自然とこぼれた。

指輪がないことの方が違和感を感じるほど、体の一部になっていたことに改めて気付いた。


「ん?あれ?」

「どうした?体調悪い?」

「あ、いえ今日は全然大丈夫です」

「そっか。少しでも違和感あったらすぐ言うんだよ」

「はい。ありがとうございます」


うーん、やっぱりおかしい。いつも指につけたまま簡単に掃除していたから気付かなかった。

刻印の日付けがおかしいのだ。でも伊織さんに限ってそんなミスありえない。


「伊織さん、この婚約指輪にメッセージを刻印してくださってたんですね」

「ああ、言ってなかったっけ?」

「これいつの日付けですか?日付けがおかしいです。この指輪をいただいた誕生日のことははっきり覚えてるんですけど、西暦が合わないし...」

「ああ、購入日だからだね。買ったのはプロポーズより何年も前だよ。ニューヨークで買ったんだ」

「え?何年も前?しかもニューヨーク?」

頭の中が“???”の私を、「ハグしたいな」と抱きしめてくれる。椅子に座ったまま。
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