この結婚には愛しかない
まさか退職がずれにずれ込んで、4月頭にあっちに行くことが出来なくなるとは思わなかった。

全てに折り合いがついて、やっとキミの元に行けるようになったのが、ホールディングスの買収という最悪なタイミングと重なってしまった。

そして時を見計らい、キミの会社の社長から、表立った正式なオファーをもらった。

これは計画通りだった。


ホールディングスが海外企業に買収されたことを世間に発表したその日の夜、キミからのメッセージには俺を心配する文字が並んでいた。


【お疲れ様です
ホールディングスの買収をニュースで見ました
神田さんは今どこで何をされていますか?
これからどうされるのでしょうか?
すごく心配です
うちの会社もどうなるのでしょうか
神田さん
どうか、どうかご無理をなされず、お身体ご自愛ください】


俺はついに3年間我慢していた文字を送ることを解禁した。


キミへの想いが溢れてしまうから。

キミを迎えに行って、連れ去りたくなるから。

ずっと言葉を返さなくてごめんね。


【心配ないよ】


もう少しだけ待っていて。

俺がキミと、キミの会社を必ず守るから。


キミがそばにいてくれたら、なんだってできるから。


逢えたらハグしたいな。


絶対我慢できないし、もう、我慢する気はないよ。
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