はじめては誕生日のあと
 ふたりが行ってしまったあと、私はひとり突っ立って、夕暮れから夜にかけて染まっていく教室の中で、ただぼんやりしていた。

 友樹はいつから夏川さんに心が動いていたんだろう?
 まったくそんなそぶりは見せなかった。
 フツーにカフェ言ってデートして、夜遅くまで電話して……。

 夏川さんのほうが綺麗だからって、そっちへ気持ちが行ってしまうなんて。
 私たちの付き合いって何だったんだろう?

 すっかり日が暮れて教室を出ると、人のいない道を通って校門までとぼとぼ歩いた。
 照明でピカピカに照らされたグラウンドではサッカー部が練習をしている。
 それをぼんやり眺めながら校門前に来て、驚いてしまった。

「え、うそ……」

 碧がまだ立っていた。

 うそでしょ?
 あれから1時間は経ってるよ。

「やっと出てきたか。まさか別ルートで帰ったかと思った」

 碧は前みたいに私をからかうように笑って言った。
 我慢していたのに、碧の顔を見たらなぜか気持ちが緩んじゃって、私はぼろぼろ涙を流した。

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