はじめては誕生日のあと
それから数日後。
まだ心の傷が癒えていないのに、父から衝撃的なことを告げられた。
「柚葉、どうかお願いだ。橘樹家にお嫁に行ってほしい」
頭が真っ白になった。
父は困惑の表情で理由を述べる。
「実は父さんの会社が傾いていてな。橘樹グループに援助していただくんだ。その代わりと言ってはなんだが……」
父の言葉が途中から頭に入ってこなくなった。
え、これって政略結婚てやつかな?
そういうの、ほんとにあるんだ。
困惑しながら頭を下げる父を見て、なんだかかわいそうな気持ちになった。
母と離婚してからずっと自分の会社と私のことで精いっぱいだった父は、なんだか昔より痩せて見える。
どんなにつらくても、私にはずっと笑顔で接してくれた。
そんな父を助けたい気持ちはあるし、それにもう私は誰かを好きになれそうにない。
「いいよ」
と軽く返事をすると、父は驚き、そして安堵の表情を浮かべた。
「そうか。ありがとう、柚葉。来週には先方と見合いの形で会うことになるから」
「うん、わかった。じゃあ、ちゃんとした格好をしないとね」
半分やけな気持ちだったことは否定できない。
むしろ、このタイミングでよかったのかもしれない。
だって、振られていなかったら私はきっと全力で拒絶しただろうから。
まだ心の傷が癒えていないのに、父から衝撃的なことを告げられた。
「柚葉、どうかお願いだ。橘樹家にお嫁に行ってほしい」
頭が真っ白になった。
父は困惑の表情で理由を述べる。
「実は父さんの会社が傾いていてな。橘樹グループに援助していただくんだ。その代わりと言ってはなんだが……」
父の言葉が途中から頭に入ってこなくなった。
え、これって政略結婚てやつかな?
そういうの、ほんとにあるんだ。
困惑しながら頭を下げる父を見て、なんだかかわいそうな気持ちになった。
母と離婚してからずっと自分の会社と私のことで精いっぱいだった父は、なんだか昔より痩せて見える。
どんなにつらくても、私にはずっと笑顔で接してくれた。
そんな父を助けたい気持ちはあるし、それにもう私は誰かを好きになれそうにない。
「いいよ」
と軽く返事をすると、父は驚き、そして安堵の表情を浮かべた。
「そうか。ありがとう、柚葉。来週には先方と見合いの形で会うことになるから」
「うん、わかった。じゃあ、ちゃんとした格好をしないとね」
半分やけな気持ちだったことは否定できない。
むしろ、このタイミングでよかったのかもしれない。
だって、振られていなかったら私はきっと全力で拒絶しただろうから。