あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
17.彼女と愛し合う日
 小さな手をぎゅっと握りしめながら、口いっぱいに乳房を含んでいる。目を瞑り、幸せそうにもぐもぐと唇を動かしている様子は、見ているほうも幸せになる。
「陛下の用事は終わったの?」
 生まれた頃よりも倍ほども重くなった息子にお乳を与えながら、ウリヤナはレナートに声をかけた。
「ああ。大したことではないのだが」
 息子が誕生したことで、またあのランベルトがやって来たのだ。ウリヤナの体調が落ち着いたところで、王城に向かおうとしたのに、ランベルトのほうが待ちきれなかったらしい。
 どちらにしろ、彼とはイングラム国について話合う必要もあったから、早いに越したことはない。
 ただ、一国の主がほいほいと出歩くのはいかがなものかと思う。それだけローレムバ国が平和だと言えばそれまでなのだが。
 それでも彼に振り回される周囲の者もかわいそうだろう。しかし、肝心の周囲の者たちは楽しんでいるようだ。あのランベルトの周囲にはランベルトと同じような人間が集まるらしい。
 つまりのところ。この国の現状としては、とりあえず平和。
 そして今、ランベルトとの話が終わったレナートが、部屋へ戻ってきたところだった。
 ウリヤナは息子にお乳を飲ませていたようだが、飲みが悪くなったためか、息子を乳房から引き離した。それでも彼はもぐもぐとまだ口元を動かしている。
 ウリヤナより小さな息子を預かったレナートは、慣れた手つきでぽんぽんと背中を叩く。
「ゲボッ」
「重くなったな」
「よく飲むもの」
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