半径3cm未満に(2)
「もって帰るって、私モノじゃないんだけどつ…。」

「日向の親は? 何も言わなかったんですか?」

「日向さん、こっち来て。」

言われるがままに魚島先生のところに行く。

するとーー

「ちょっ、な、なに…!!」

魚島先生は私をひきつけると私の目を片手でふさいだ。

「ごめん、ちょっとめくるよ?」

先生はあいている方の手で器用にエプロンをぬがすと、私の服を少しめくって私のおなかを星川先生に見せた。

「この傷、わかる?」

「何かしたんですか、日向に」

「ちがうよね、日向さん。
おなかの傷のこと、説明できる?」

ひやっとおなかにつめたいものがあたった。

魚島先生の指が、あたっている。
「…お母さんに、会いに行ったとき…ガラスが、あたって…。
2年前ぐらいから…お母さんが、ずっと怖かった…」

そう言うと、魚島先生の指がはなれて、めくられていた服が元に戻った。

「この傷、お母さんにつけられたんだよ?
戻れなくて当然じゃない?」

先生の手がはなれ、視界にまっ先にうつったのは、星川先生の驚いている表情だった。

「…何であの時、ついでに相談しなかったの?」

「あの時?」
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