年下の彼は甘い甘い鬼
現実


━━━翌日


今日こそはと気合を入れて家を出た


スマホにガイドをお願いして歩くこと十五分


ハローワークは沢山の人で溢れていた


番号札を貰って、その番号の席へ向かう
閲覧専用の端末を使って希望の職種と待遇を選べば、一気に情報が溢れてきた


・・・多すぎる


地域を徒歩圏内に絞っても医療系は多くの求人がある


希望の働き方を絞って再度検索をかけても
情報量の多さに眩暈がしそうになった


求人票は数枚プリントアウトできるらしく


より希望に近い医院を数カ所選んでプリントすると、窓口応対の番号札を取った



求職登録を済ませ相談員さんと話していくうち


端末には表示されない求人もあることを知った

通いながら紹介を待つこともお勧めだそうだ


大学の在学中には浅見医院で働くことを決めていたから就活はしていない

初めての挑戦は土地勘もないことで戸惑いばかり

ハローワークを出たあと迷いなく向かったのは杉田さんの店だった


カラン


大きなベルの付いた扉を開くとコーヒーに匂いに包まれる


「アズちゃん。いらっしゃい」


「こんにちは」


杉田さんの笑顔に吸い寄せられるようにカウンター席に座った


「三日振りかな」


「ご無沙汰してます」


「ハハハ。本当だ」


「コーヒーをお願いします」


「畏まりました」


前回はドリップだったコーヒーが今日はサイフォンらしい


「初めて見ます」


理科の実験のようなワクワク感に杉田さんの手元に集中した










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