年下の彼は甘い甘い鬼
なんでも屋
━━━四月十日
出勤初日
診療開始が九時なのに
『十分前出勤で大丈夫だ』と訳の分からないことを告げられた所為で
七時半には出勤した
もちろん、病院は真っ暗
期待はしていなかったとはいえ予想通りの展開に鍵を預かっておいて良かったと胸を撫で下ろした
先ずは裏口から入って持参したナースシューズを履いた
更衣室は代替わりしてからは使われておらず、ゴミ部屋と化していたのを昨日綺麗に掃除した
専用ロッカーはないけれど、入り口の鍵を渡されたから、私専用の休憩室として使うことにした
二畳ほどの畳敷きのスペースに組み立て式の三段ボックスがあるのみ
シンプルだけど靴が脱げるのは有り難い
持参したカゴにバッグを置いて、中からスクラブ上下を取り出した
深い紺色のそれは浅見医院で着ていたもの
記念にと持ち出していたけど、まさか使う日が来るとは思わなかった
サッと身支度を整えてポーチの中から“いつもの”アイテムを取り出した
可愛いキャラクターの付いたボールペン二本とマジック
小さなメモ用紙と小さな電卓
ハサミと印鑑、サージカルテープと絆創膏を入れると両方のポケットはパンパン
吊り下げタイプの消毒液を腰につけ
壁にかかっている鏡を見て髪を後ろで一つに束ねると
久しぶりの姿に気持ちが引き締まった