年下の彼は甘い甘い鬼
ヒロのこと



「ほら、オネエサン」


元々キャリーバッグと大きなバッグパックでこの街に来たから


大して荷物はないと思っていたのに


増えていた


「これはどうする?」


キッチン用品までは持ち出さないつもりだけど、炊飯器の中にご飯が残っていた


「ラップに包んで持って行く」


「やったぁ。夜もオネエサンのご飯だね」


ヒロの後ろに大きな尻尾が見えるよう


できるだけそばにいて目線を合わせてくれるヒロからは気遣いが伝わってくる

だから・・・
「ヒロの家って近い?」


その優しさに触れていたいと思った


「ん?家は近いよ。なんなら駅にもオネエサンの職場にも近い」


「え〜。一等地に住んでるの?」


「うん。一等地」


片目を閉じるとか、自分がイケメンだって分かっているのだろうか

ヒロの仕草ひとつひとつに私の胸も忙しい


「じゃあ冷凍ストックも持って行こう」


喜ぶ顔が沢山見たいって、くすぐったい気持ちにもなる


「やったぁ」


年下の男の子ってこんなに可愛いものなのかな


比較対象がいないからなんとも言えないけれど


きっとヒロだから・・・だろう


ピンチに駆けつけてくれた恩人に、私も精一杯応えなきゃ


「オネエサン。溶ける前に出発しよう」


「うんっ」


何故か冷凍ストックを気にするヒロと部屋の中を点検して

ゴミも纏めてアパートの収集ボックスに出したあとは


「オネエサン。置いてくよ〜」


「待ってヒロ」


キャリーバッグもバッグパックさえも持ってくれたヒロを追いかけた









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