年下の彼は甘い甘い鬼



「やったぁ」


「キャァ」


勢いよく立ち上がったヒロは私をお姫様抱っこしたままクルクルと回った


「カレカノだ」


テンションの高いヒロの首にしがみつきながら


せめてもと。思った


「ヒロ」


「ん?」


「名前って」


仮でも彼女になるのならヒロのままじゃダメな気がする


そう思った私を腕から下ろしたヒロは


「オネエサンが呼ぶのはヒロのままで良いよ。だってね、凄いことに名前の漢字って“ヒロ”って読むんだ
だから“ヒロ”はオネエサンだけの特別ってことにしよう?」


キラキラした笑顔で話す


「でもね。本名も知ってて欲しいから言うね」


「うん」


「森本尋《もりもとじん》」


「じん?」


「そう・・・尋問の尋。尋ねるって一文字」


「尋ってヒロとも読めるんだね」


名前が嫌いだと言ったヒロの本名は誰かと同姓同名という訳でもなかった

ただ、私だけという特別感を持たせてくれたのだから


これまで通り“ヒロ”で呼びたい


「私はヒロって呼ぶね」


「うん。オネエサンと一緒にいる僕が本当の僕だから“ヒロ”が良い」


「ありがとう」


「こちらこそ」


「オネエサンのことは僕が命をかけて守るからね。どんな小さなことでも僕を頼って」


「それはヒロも同じだよ?私もヒロを守りたい」


「モォォォォ!オネエサンって僕をどうしたいのっ」


いきなり悶え始めたヒロは私をギュウギュウと抱きしめた


そこでふと思い出した



「ヒロは仕事休みなの?」


「うん。休み」


今更だけど。一日付き合わせてしまった


「せっかくのお休みを潰してしまったね」


「オネエサンと一緒だったから楽しかったよ?」


こういうところが人タラシだと思う


「ありがとう」


それでもお礼は言わなきゃね


「どーいたしまして」


「「フフ」」


そこから、順番に家の中を案内してもらった


「夜、寂しくなったら来て良いよ」


ヒロの匂いがする寝室は大きなベッドが鎮座する空間だった


「うん。大丈夫」


「チェ、やんわり断ったでしょ」


「フフ」


「夜泣きしないかな〜」


「子供じゃないんだからねっ」


「はいはい。オネエサン」


夜ご飯はヒロのリクエストで炊飯器に残っていたご飯の活用でシーフードドリアになった


杉田さんのお店に行こうとバッグに入れていたホワイトソースは、気がついた時には溶けていた


それも含めて提案してくれるヒロは良い子だ





「オネエサン。僕の大盛りね」


「は〜い」



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