誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー

食器を片付けようとキッチンへ向かった少女。

王子様は、その後ろをついてきて、キッチンに入ります。


「この食べ物はなんだ？」


そして、キッチンに置かれている、

ごくごく普通の野菜を利用した庶民料理を興味深そうに眺めました。


物珍しそうな顔に、少女は、少し楽しそうに口もとを緩めます。


「ご存知ないのですか？王子様。とっても栄養のある食べ物ですよ？」

「なんだ、申してみよ」

「家の前にたくさん生えているではありませんか。この土地では豊作です」

「い、家の前！？雑草ではないか！！」


驚いて、まるでゲテモノを見るかのように、

顔を顰めながら、料理を見つめる王子様。

少女は、こらえきれず、笑いを漏らしました。


「ふふ、冗談です。普通に野菜ですよ」

「お前……随分と生意気になったなぁ」


王子様は、ゆっくりと顔を上げ、じとりを少女を見つめます。

次の瞬間、悔しそうに笑った彼に、頬を摘まれむにむにと引っ張られました。


「わー、いひゃい、いひゃいですーー！」

「仕返しだー！」


ふたりの楽しそうな笑い声が建物内に響き、少女の家族も微笑ましそうに笑みを零します。

そんなじゃれあいが許されてしまうくらいには、王子様と少女は仲を深めていました。


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