誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
「ねえ、皇輝!このシーンやってよ!」

「は?なんで俺が」


後ろから騒がしい声が聞こえてきて、私たちは少し視線を向ける。

教室の後ろの方に固まって遊んでいる、皇輝を含む男子の集団。

そこに混じって元気な女子達が騒いでいるようだった。


「えーだって、イケメンだし?この俳優にちょっと似てるし?」

「ほら、前世王子だって言ってたじゃん!出来るでしょ!」


ぐいぐいの女の子たちも話題のドラマの話をしているようで、

クラスのアイドル的存在でもある可愛い女の子、萌は、

期待をするような甘えるような目で皇輝を見つめていた。


「確かに、前世王子なんだっけ?」

「いーじゃんいーじゃん!萌ちゃん姫っぽいし!」

「えー、なにそれありがとっ」


可愛いを自覚した萌のおねだりが聞いたのか、

皇輝の友達が乗り気になり、皇輝は渋々ながら萌に向かい合った。


「…姫、お前に惚れた。俺の妻になれ。」


傲慢な態度でありながら跪き、姫を見上げる形で手を差し出す。


ついつい見てしまったその姿に、

私はなぜか心臓が大きく音を立て、苦しいくらいに暴れ出すのを感じて目を逸らした。
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