となりの色気がうっとうしい
「え……?月雨ちゃん?」
エレベーターから出て、イヤホンを耳に挿そうとした彼がチラッと視線をこちらに向け、私の存在に気付いた。
驚いたように少しだけ目を見開く彼に、ぺこっと軽く会釈する。
「あの……先日は色々とありがとうございました。ドリンクとゼリーまで……」
「え。まさかそれ言うために俺のこと待ってたの?」
「……こういうのは早めに伝えるべきと思ったので。でも、教室では話しかけずらいので」
天海くんがあまりにも、じーっと見てくるので思わず視線をそらす。
「ふーん。かわいいところあるね〜月雨ちゃん」
「だからその呼び方、やめてくださいっ」
「はいはい」
絶対直す気なんてなさそうな返事にため息をつく。
「で、もう大丈夫なの?」
エントランスを出て、学校に向かいながら天海くんがそう聞いてくる。
本当は、彼を置いて早歩きで先に行ってしまいたいけど、助けてもらった手前、今までのような態度がしにくい。
「はい。もう熱も完全に下がったので」
「良かった。てか、妹ちゃん、ちゃんと渡してくれたんだね」
「はい。メッセージ付きで部屋に置いてくれてました」
奏と天海くんが顔を合わせてしまったのはあんまり嬉しいことじゃないけれど。