絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする
次々と流れ込んでくる人たちであっという間に通路は埋め尽くされてしまい、座席に座る人たちは私たちも含めて動けない。
何が起きているのかわからないことが一番怖い。
冬上さんは立ち上がると棚から荷物を下ろして、それを私に渡しながら言った。
「何かあったら、その荷物を抱えるなりして頭や胸元を守った方がいい」
「それはどういう意味ですか?」
「刃物を持っていると聞こえた」
さらに大きな悲鳴が近づいてくる。シャツが赤く染まっている人もいる。手足が震えてどうしようもない。歯もカタカタ震えて止まらない。怖い。まさか自分がこんなことに遭遇するなんて考えたことすらなかった。
刃物を持った男が悲鳴をあげる人たちを蹴散らしながら、この車両に入ってきた。もうダメかもしれない。お母さんやお父さん、妹の顔が次々と浮かんだ。でもこの車両内で、一人だけ冷静に状況を判断している人がいた。
冬上さんは、私たちの座るシート横を男がナイフのようなものを振り回しながら通り過ぎる瞬間、さっと足を出して男を転ばせると、素早く男の背中に飛び乗りナイフを持った手を足で押さえてナイフを取り上げた。そして男の両手を背中に回して取り押さえた。
「誰か縛るものを。紐のようなものがあればお願いします。真下さん。そのナイフを直接触らないように、ハンカチとかで包んでから俺のケースの中に入れて」
「は、はいっ…」
どうしても手が震えてしまう。だけど、ナイフを簡単に手が届かない場所にしまっておこうとする冬上さんの意図は分かる。大切なことだ。
ナイフにはベットリと赤く血が付着していて、見るだけで気持ちが悪くなる。なるべく視界に入れないようにしながら、二つ折りにしたハンカチで持った。だけど、そのまま冬上さんのケースに入れる気にはならなかった。冬上さんのケースを汚すくらいなら、まだ私のバッグの方がましだ。そう思いながらも、いざ入れるとなると躊躇いが全くなかったわけじゃないけど、三つに分かれた仕切りの一番手前にあるファスナーがついたところに入れてからしっかりとファスナーを閉じた。
何が起きているのかわからないことが一番怖い。
冬上さんは立ち上がると棚から荷物を下ろして、それを私に渡しながら言った。
「何かあったら、その荷物を抱えるなりして頭や胸元を守った方がいい」
「それはどういう意味ですか?」
「刃物を持っていると聞こえた」
さらに大きな悲鳴が近づいてくる。シャツが赤く染まっている人もいる。手足が震えてどうしようもない。歯もカタカタ震えて止まらない。怖い。まさか自分がこんなことに遭遇するなんて考えたことすらなかった。
刃物を持った男が悲鳴をあげる人たちを蹴散らしながら、この車両に入ってきた。もうダメかもしれない。お母さんやお父さん、妹の顔が次々と浮かんだ。でもこの車両内で、一人だけ冷静に状況を判断している人がいた。
冬上さんは、私たちの座るシート横を男がナイフのようなものを振り回しながら通り過ぎる瞬間、さっと足を出して男を転ばせると、素早く男の背中に飛び乗りナイフを持った手を足で押さえてナイフを取り上げた。そして男の両手を背中に回して取り押さえた。
「誰か縛るものを。紐のようなものがあればお願いします。真下さん。そのナイフを直接触らないように、ハンカチとかで包んでから俺のケースの中に入れて」
「は、はいっ…」
どうしても手が震えてしまう。だけど、ナイフを簡単に手が届かない場所にしまっておこうとする冬上さんの意図は分かる。大切なことだ。
ナイフにはベットリと赤く血が付着していて、見るだけで気持ちが悪くなる。なるべく視界に入れないようにしながら、二つ折りにしたハンカチで持った。だけど、そのまま冬上さんのケースに入れる気にはならなかった。冬上さんのケースを汚すくらいなら、まだ私のバッグの方がましだ。そう思いながらも、いざ入れるとなると躊躇いが全くなかったわけじゃないけど、三つに分かれた仕切りの一番手前にあるファスナーがついたところに入れてからしっかりとファスナーを閉じた。