皆の推しメン(ズ)を私も好きになりました
プロローグ

花嵐の入学式






入学式。


そよそよ桜の花びらが舞う良いお日柄どころか、突然の異常気象で気温がグッと下がり、しかも強風で体感温度も急降下。

なのに高校の校門付近で、あっちからもそっちからも何処からでも聞こえてくる叫びに近い女子達からの黄色い声は、寒くて声を上げるのではなく、どうやらある名前と共に甲高い声を上げているらしい。


正直それがまさか人間にむけられているとも思っていなく、なにやらどんな美猫が歩いているのかと本気で思い、校舎を見渡す。


まぁ、美はあながち間違えてはいないんだが。あの時の私は何も知らず、ただただお下がりの制服のスカートが短くて、寒いことの方が私的に大問題。


昨日の夜から寒くて震えてしまいそうなのに、上着を着ていないの私だけ。

小学生の時から使っている大事な大事なマフラーを春なのに首に巻いて、学校の玄関前に貼り出されているクラス割りを、人を掻き分けて確認する。


D組…か。

知ってる人は居るような居ないような、同じ中学の人の名前を数人見つけても何の感情も湧かず。


私友達居なかったしな。
そもそも友達なんてこれからもずっと出来なさそうだし。


「ちょっとD組だって!」
「あー!違ったぁぁぁ!」

黄色の声を向けられた主もどうやら同じクラスだったらしいが、あの漢字の読み仮名、一発で読めるわけがない。


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