余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
「まあ、なんとなく想像つきますけどね。先生の様子がおかしい時はだいたい婚約者さん絡みですから」
「今度こそケンカしちゃいました?」

 研修医がやや楽しげに聞いてくるが、そんなに楽観的な問題ではない。

 やっと天乃と想いが通じ合って、身体も結ばれた。これ以上なにもいらないと思うほどの幸せを手に入れた矢先、プロポーズは断られ、彼女は俺の前から姿を消した。連絡すらも取れず、一体どうしたらいいのかわからない。

『……昨日は幸せすぎたから、今日が来なければよかったのにって、思ってるだけ』

 とても悲しげな顔で残していったその言葉からして、彼女は最初から俺のもとを去るつもりだったような気がする。あの一夜は、本当にただの思い出作りだったのだろうか。

 天乃が俺を好きだと言ったのは、嘘だったとは思えない。だとしたら、俺から離れる理由はなんなのか。

 考えてもわからず、ここ数日は胸の痛みと苦しさが続く日々を過ごしている。

「ケンカ……だったらまだいいんだけどな」

 ぽつりと呟くと、ふたりは顔を見合わせて同時に首をかしげた。そして、三浦さんが励ますようにぽんと俺の肩を叩く。

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