余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 ──思いがけない告白。

 不覚にも目頭が熱くなり、モニターを映す視界が滲んできたので慌てて器具を脳から離した。ほんの少しでも手元が狂ったら終わりだ。

 手術中に告白するなんて、本当に予想外のことをするよな。天乃に想われることが俺にとってどれだけ嬉しくて幸せか、お前はきっと自覚していないんだろう。

「それは手術が終わってから直接伝えてくれよ……」

 瞬きで視界をクリアにしながらボソッと呟く俺に、三浦さんが優しい眼差しを向けるのがわかった。長い片想いをしていたと知っている彼女だから、きっと後で『よかったですね』などと言ってきそうだ。

 一度深呼吸をし、再び意識を集中させて切除を再開する。スムーズだった会話が突然途切れる部分を確かめていき、俺の頭の中で〝天乃の脳の地図〟が完璧に作れた。

「言語野の形はわかった。限界まで攻める」

 俺の言葉に皆が気を引き締め直すように返事をし、残りの腫瘍を慎重かつ大胆に焼き切っていく。

 後遺症も腫瘍も、悪いものは絶対にひとつも残さない。また俺の顔を見て、笑って、心からの声を聞かせてくれ。


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