君との恋のエトセトラ
カタカタとキーボードを打つ音だけが響く中、頼まれていた仕事が一段落した凛は、もう一度木原のデスクに向かう。

「あの、木原さん。何か私にお手伝い出来ることはありますか?」
「え、いいの?」
「はい、もちろんです」
「じゃあ、今プリントアウトしてる資料、冊子にして綴じてもらえるかな?15ページで10セットなんだ」
「分かりました」

凛はプリンターから次々と出力される書類を手にする。

ページ数を確認しながら振り分けていると、ん?と違和感を感じて文章に目を落とした。

「木原さん、もし違っていたらすみません。ここの文章、『マーケティング』の『ン』が抜けてませんか?」
「どれ?あ!ほんとだ。ごめん、すぐに打ち直して印刷するね」
「あの、よろしければ私がやりましょうか?」
「ほんとに?助かる!ありがとう、凛ちゃん」
「いいえ」

凛は修正して印刷すると、他にも誤字脱字がないかをチェックしてから丁寧に折って冊子にした。

「出来ました」
「ありがとう!おかげで間に合ったよ。じゃあ、打ち合わせ行ってきます」
「行ってらっしゃい。お気をつけて」

急いで出て行く木原を、凛はにこやかに見送った。
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