君との恋のエトセトラ
第十三章 夢の終わり
「やあ、いらっしゃい。お待ちしてましたよ。さあ、どうぞ掛けて」
「はい、失礼致します」

次の日の午後。
凛と航は揃ってMoonlightの打ち合わせに訪れていた。

梶谷はにこにことふたりを出迎え、開発担当者の30代の女性を紹介する。

「セレーネシリーズの開発を担当しました、梅田と申します。よろしくお願い致します」
「スタークリエイティブエージェントの河合と立花です。こちらこそどうぞよろしくお願い致します」

4人でソファに座り、テーブルに資料や商品を並べて早速打ち合わせに入った。

「このセレーネシリーズは、どちらかと言うと華やかなメイク向きです。パウダーにはきめ細やかなラメが入っていてキラキラしますし、アイメイクやチークも、色を豊富にパレットに並べました。リップもしっかり色づき艶っぽく仕上がります」

いかにも仕事が出来る大人の女性という雰囲気の梅田は、実際に商品を自分の手の甲で試しながら説明する。

「もちろんオフィスでも浮いたりしないように、控えめなナチュラルカラーも用意しています。このコンパクトやパレットは、自由に自分で選んだ組み合わせでセット出来るんです」

へえー、と凛は感心して身を乗り出した。

「立花さん、実際にいくつか選んで頂けますか?」
「え、よろしいのでしょうか?」
「ええ、まずはファンデーションから。ライトベージュ、オークル、他にも少しピンクがかったものもあります。立花さんは色白だから、これがオススメかも」

凛の肌と見比べながら、梅田はコンパクトにファンデーションをセットする。

「あとは、目元やチークに載せる色…。まぶたの上にはこのパープル系、チークはピンクがメインの暖色系はどうですか?」
「はい。とっても可愛いです」
「ではこれを、コンパクトの右と左にセットして。ほら!立花さんオリジナルのコンパクトの完成です」
「わー、素敵!これ一つ持ち歩けば、いつでもしっかりメイク出来ますね」
「ええ。アフター5にどうぞ」
「あはは…。スーパーに行くだけですけどね」
「あら、もったいない。若いんだから、クラブとか合コンとか行けばいいのに」
「いえいえ。田舎者は立入禁止区域ですので」
「なあに?それ」

梅田は可笑しそうに笑い出す。

すっかり打ち解けた凛と梅田を、航と梶谷も微笑ましく見守る。

「それでは河合さん。我々も話を詰めましょうか。まずは大まかな今後のスケジュールから」
「はい」

凛達がメイク道具で盛り上がる横で、航達は締め切りや納期の確認をしていた。
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