君との恋のエトセトラ
第十八章 看病
「ではでは、今月もお疲れ様でした。乾杯!」
「かんぱーい!」

Moonlightの打ち合わせから戻ってくると、航と凛は恒例の月末飲み会に参加していた。

「あーあ、また今月も河合さんがぶっち切りですよ。トップを取ったら凛ちゃんに告白しようと思ってたけど、もう諦めようかな」

隣でブツブツ愚痴をこぼす戸田に、そうした方がいいと航がひとりごちていると、戸田は、
「トップは諦めてさっさと告白しよ!」
と明るく顔を上げた。

航は思わずゴホッとビールにむせる。

「お前な、そんな簡単に諦めるな!」
「ですよねー。そんなことで俺は凛ちゃんを諦めたりしません!」
「そっちじゃない!」
「あ、凛ちゃーん!乾杯しよ!」
「おいこら、戸田!聞いてるのか?」

グラスを手にそそくさと席を立つ戸田に、航はヤレヤレと肩を落とす。

仕方なく一人でグラスを傾けながら、航はチラリと視線を上げて、戸田と乾杯している凛を見る。

(彼女、いつの間にあんなコピーを?)

Moonlightでの打ち合わせで凛が最後に見せたデザイン画。

梶谷と梅田を即座に唸らせて納得させたあのキャッチコピーは、恐らく凛が考えたものに違いない。

誰にも見せずに密かにしまいこんでいて、打ち合わせの流れで思い切って提案してみたのだろう。
そうでなければ、いずれはごみ箱に捨てるつもりだったのかもしれない。

(参ったな。俺は本当に役立たずだ)

凛がキャッチコピーを考えて、デザイン画を用意していたことにも気づけなかった。

(あの時デザイン画を見せてくれて良かった)

梶谷と梅田の反応は、これぞまさに!と納得のいく作品に出逢えた表情そのものだった。

そんな二人を見て、航はこの仕事の成功を確信した。

(いや、俺の成功じゃないな。全て彼女の手柄だ。Moonlightに関われたきっかけも彼女だし)

そう言えば、あの時のお礼もまだ出来ていない。
今回と合わせて、何かちゃんとしたお礼をしなければ、と航は考えを巡らせ始めた。
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