【第二部】天妃物語 ~「私以外にもたくさん妻室がいた天帝にお前だけだと口説かれます。信じていいのでしょうか」~
「はい、今いきます!」

 私は慌てて寝間から出ました。
 もちろん黒緋も一緒ですよ。
 みると庭園を挟んだ渡殿から紫紺が青藍を担いでバタバタと走ってきます。

「おはようございます。朝から元気ですね」
「おはよう、ははうえ。オレはげんきだけど、せいらんはおもらしした」

 紫紺の報告に青藍が小さな両手で顔を隠してしまいました。

「あうあ〜、うえ~ん!」

 また泣きだした青藍を黒緋が呆れた顔でなだめます。

「もらしたくらいで泣くな」
「うっ、うぅ、うえええ〜~ん!」
「あーあ、ちちうえがなかした」
「最初から泣いてただろ」
「なくのがしゅみだから?」
「そういうことだ」
「ばぶっ!? うえ~ん、え~~ん!」

 青藍がさらに盛大に泣きだしました。
 なにを言っているか分からなくても、いじわるを言われたことは分かったようですね。

「あぶぅ、あ〜。うえ~ん」

 私に向かって小さな両手を差しだしてきます。
 私は青藍を抱っこすると、青藍は「あうあ〜、あうあ〜」と泣きながら父上と兄上を指差しました。
 ……これは完全に訴えてますね。

「分かりました。あとで父上と兄上にはお話ししますから」

 苦笑して青藍の涙を拭いてあげます。

「もう泣くのはおしまいにしましょう」
「うぐっ。あい」
「いい子ですね。よく涙はおしまいにできました」
「あい、あい」

 青藍がこくりこくりと頷きます。
 もう大丈夫のようですね。お着替えをさせてあげないと。

「では私は青藍を着替えさせますので、黒緋様と紫紺はさきに朝餉をどうぞ」
「それなら湯に入るといい。そのほうが手っ取り早いだろ。俺も紫紺を連れて入ってくる。朝餉はそのあとにしよう」
「それは嬉しいです。朝から湯浴みなんて贅沢ですね」
「たまにはいいだろ。せっかくの旅路だ。それに目的の村までそれほど距離があるわけじゃないからな」
「それならお言葉に甘えて」

 朝から湯浴みをできるのは嬉しいことです。
 それに昨夜の名残りもあるので助かりました。きっとそれを気遣ってくれたのですね。

「青藍、湯浴みに行きましょう。紫紺は黒緋様とゆっくり湯浴みしてきてくださいね。朝の湯浴みは心地よいものですよ」
「やった~! ちちうえ、はやくいこ!」

 紫紺は黒緋の手を引っぱって浴場に連れていきます。
 はしゃぎだした紫紺に青藍も楽しくなったのか、手足をばたばたさせて喜びました。
 こうして私たちは朝から湯浴みをして目的地の村に出発したのです。





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