【シナリオ】ネオ♡➷シンデレラ
episode.1



あんりモノローグ(以下、あんりM)「シンデレラ。別名、灰かぶり姫。不当な扱いを受けていた女の子が、ツライ日々を乗り越えて王子様と結ばれる物語」
あんりM「そんな、いわゆる"シンデレラストーリー"に私は世界一夢見てる」
あんりM「ううん、夢なんて言葉で終わらせない。なってやろうじゃない、シンデレラに!」





〇大勢の人と高級車・快晴・朝



あんり「やっと来れた、栄華学園!!」


どどんと効果音。大きな学園の前で仁王立ちをするあんり。
期待や興奮を感じさせる表情。

きらきらした面持ちで門をくぐり、学園内へ入っていく。

堂々とモデルかのようにきれいな姿勢で歩くあんりに、周りがざわざわとしだした。


生徒A「あの子かわいい!」
生徒B「新入生かしら!?」


そんな声に気分を良くして歩くあんり。
制服のシャツに結ばれた白のリボンを自然に描写。


生徒C「でも見て、一般入学者よ」
生徒D「なんだ、顔はいいのにもったいねー」


褒め言葉の隙間からこそこそと聞こえるそんな言葉に、あんりの表情はたちまち不機嫌なものに変わる。

※白リボン&ネクタイ→一般入学or進学・赤リボン&赤ネクタイ→特別入学or進学
栄華学園は初等部、中等部、高等部に分けられている


あんり「みんな一般一般…」


むす、と、白のリボンをつまみながらつぶやくあんり。

いい意味でも悪い意味でも目立って人を寄せ付けていないあんりだったが、そこに女の子が近づく。


薇 黒子(ぜんまい くろこ)
あんりとは中学からの友達で、貧富の差関係なく仲良くしている。
黒髪ストレートな美人だが近寄りがたい雰囲気を漂わせる。
赤リボン。


黒子「おはようあんり。入学おめでとう」
あんり「おはよ!黒子も入学おめでと!」


寄せた眉は元に戻り、ぱっと笑顔になったあんり。

赤リボンである黒子があんりに話し掛けて少しざわつく。


黒子「やっぱりその制服似合ってる。…リボンの色は最悪だけど」
あんり「はは…」


白のリボンを睨みつける黒子に、あんりはにがい笑いをこぼした。


あんり「今に見てろって話よ。私、必ず玉の輿にのるから」


にやりとしたかっこいい表情。
自信満々に言うあんりに、黒子は「あんりのそういうところ好きよ」と普段は硬い表情を和らげる。

その時、辺りにきゃあぁぁと黄色い歓声が轟いた。
そちらを見れば、黒塗りの高級車から人が出てくる。

冷たくて沈静なオーラをまといながら、識が現れる。
その整った顔に驚くあんり。黒子はわずらわしそうに眉をひそめた。


黒子「騒がしい……」
あんり「あ、あれが鷹宮財閥の御曹司、鷹宮識。…王子様最有力候補!」

あんり「どんな事業にも根を伸ばし、世界レベルの資産を持つ鷹宮財閥。そんなの将来安泰じゃない…!!」

目を¥マークにさせて両手を絡めて握るあんり。
黒子はそんなの慣れているからと普通の表情(無表情)だ。


黒子「堕とすのは彼に決めたの?」
あんり「そんなもったいないことしないよぅ!栄華学園(ここ)は宝の山なんだからね」
黒子「そうね、あんりは宝を見つけに来たんだものね」
あんり「なに言ってるの!それもそうだけど、私は黒子と一緒の学校に通いたかったからここに来たんだよ?」


これからもよろしくね!と爛漫に笑うあんりに、黒子はそう…と返す。
照れてる表情ではないけど、あんりは緩んだ頬に気づいた。

そんな2人の様子を、識が見ているカット。





〇入学式・大きな講堂



長ったるい先生の話を聞きながらあんりは黒子の姿を見つけ、気づいた黒子に笑顔を送る。


先生「新入生主席、鷹宮識」


先生の声に、ぱちりとそちらを向く。


あんり(あ、御曹司だ。さすがに主席は取られちゃったか……)


悔しむような視線を、演台に登った識に向けた。
でも表情は嬉々としてる。


あんり(シンデレラストーリーを送るためだけに磨いた容姿も勉学も運動も、すべて私の上をいく存在…。さすが最有力候補)


識「__まだ未熟な私たちですが、先生や先輩の助力のもと、将来活躍できる大人へと成長できるよう精進してまいります。そして、__」
あんり(リサーチ通り、ちょっと表情に難あるいい子ちゃんだなぁ)


平坦な声のトーンでにこりともせずにスピーチをする識。


識「以上をもちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます」


そう言って原稿の紙から顔を上げた識と、ふーん、というような表情をしてたあんりと目が合う。
すると一瞬識の眉が寄って、少し睨んだような、険しい顔つきになった。


あんり(え、私今睨まれた!?)


ただお辞儀をした後は無表情に戻ったので、あんりはあれ?という顔をする。



〇廊下・入学式後でざわざわしている



あんり「はぁ~やっと終わったぁ」
黒子「長かったわね、お偉いさまたちの話」


ぐーんと伸びをするあんりと黒子が歩いている。
ちらほら聞こえる白リボンについての声にちらりと目を向けて微笑むと、その相手の頬がぽっと赤く染まった。


黒子「あんりは寮だったわね」
あんり「うん!もう荷物は運んでもらってるんだ」


黒子は家から通うんだよね、と問うあんりに、少し拗ねた様子で頷く黒子。
するとどこからか黒子の執事が現れ、「お車の準備ができております」と言った。

じゃあばいばいまた明日ね、とあんりは黒子と別れて寮へ向かう。



〇とある階段の近く・人は多くない



少し歩くと、ぴろりんとスマホの通知が来る。
先ほど別れたばかりの黒子からのメッセージで、「いつでも泊りにきて」という内容だった。
そんな黒子にかわいいなとにこりと笑い、返事を打とうとしたその時。


あんり「っわぁ、!!」


足元がおろそかになっていたあんりが、滑って転んでしまう。
いったたたぁ…と床にぺたりと座り込むあんり。
しりもちをついた部分をさする。

すると、階段を下りてきた識があんりを見て足を止める。
※後ろには銀の髪を長めに伸ばした男子生徒がいるが、この時は影が薄め。


識「通行の妨げだ」


睨むような目つきと冷徹な声色でそう言った識。
あんりはそんな識に目をぱちくりとさせた。
彼女の表情に、睨みを深くする識。


識「一般生徒がこの学校の床に座り込むな」


差別したような言い方に、あんりの額には青筋が浮かんだ。
ぱんぱんとほこりをはらって立ち上がり、にこりと作った笑みを浮かべる。


あんり「失礼しました」


そんなあんりに満足したのか、識は何も言わずに後ろにいた生徒と一緒に去っていった。
あんりはぎゅっとこぶしを握り締める。


あんり「っっなんなのあいつ!!くそムカつくぅ~~!」


溜めた怒りをはじけさせたあんり。
紳士なら転んだ女子を起こすとかできないわけ!?と文句を言う。


あんり「一瞬綺麗な顔に見惚れた私がバカだった!!」


ちらりと脳裏に、冷たい彼の綺麗な顔が浮かぶ。
あんりはぶんぶんと頭を振ってその顔を脳裏から消した。


あんり「……決めた。絶っっ対あの冷徹御曹司を惚れさせて、今日の発言を後悔させてやるわ」


だいぶムカついている様子のあんり。
貧富差別は彼女にとって地雷である。





〇登校中・綺麗に整備された学園への道



あんりと黒子が歩いている。
寮は学園から少し離れたところにあるため、少しの間登校が一緒になる。


あんり「__ということで、王子様(ターゲット)は鷹宮識になりました!」
黒子「そう。じゃあ、彼の前でガラスの靴を落とさないといけないわね」


さらりとそう言う黒子に、あんりは楽しそうに微笑んだ。

すると、周りがざわざわとしだす。
校門のほうを見れば鷹宮識が歩いているところだった。


あんり「ううん。ガラスの靴なんてのは、狙って投げつけてやるのよ」


そう言うと、あんりは足を蹴り上げた。
その拍子にローファーが飛んでいき、狙った通りに識の頭にヒットする。

さすがにびっくりした黒子は、いつもより少し目を見開いていた。


黒子「蹴りつけてる、の間違いじゃない」
あんり「あ、たしかに」


でもすぐにくすくすと笑い、いつもの調子に戻る2人。
あんりは識に近づく。


あんり「ごめんなさい、足が滑っちゃった」
識「……灰音あんり」
あんり「私の名前知ってたんだね、鷹宮識くん」


あんりは後ろで手を組み、こてんと笑顔を浮かべた。
識は、不快そうに眉をひそめる。


識「ああ。その容姿も成績も、一般生徒(そちら)ではもったいないと思ってな」
あんり「………喧嘩売ってる?」
識「事実を言ったまでだが」


作り笑顔を浮かべるが怒ってる様子のあんりと、まったく表情を変えない識が向かい合っている。

ぴりぴりとした空気が流れている中、黒服の護衛が2人、間に割って入った。※さりげなく銀髪の男子が描かれている


護衛A「それ以上近づくな」
護衛B「この女、鷹宮様に靴を…!」
識「いい、下がれ」
護衛A「で、ですが!」


引き下がらない護衛に識が有無を言わせぬ強い瞳を向けると、ぐっと押し黙った。
そんな護衛たちをどけて、識はあんりに近づく。


識「これは、宣戦布告ということでいいのか」※落ちたローファーに目線をやりながら
あんり「違うよ」


首を傾げた識の赤いネクタイに手をかけ、ぐいっと引っ張る。
キスしそうなほど近づいた2人。
無表情だった識が、少しびっくりした顔をする。


あんり「あなたを堕とす。これは絶対だから、宣戦布告じゃない。ただの予告だよ」
あんり「頭のてっぺんから足の先まで、私でいっぱいにしてあげる」


あんりの挑戦的な笑みに、識はふ、と口端を上げた。
初めて見た識の笑った顔にあんりはドキリと心臓が高鳴り、少し目を見開く。
そんなあんりの顎先を、識の綺麗な指が掬った。


識「悪いが、お前が望む未来はない」


彼の言葉に、はぁ?と不機嫌な顔つきになるあんり。


識「せいぜい諦めて砕けることだ」


そう言い残して、識は歩き出した。
護衛たちも識の行くぞと言う声に慌ててついていく。

怒りで震えるあんりに、黒子が声を掛けた。


黒子「なかなか手ごわそうだけど」
あんり「上等じゃん。すぐに惚れさせてやるから…!!」


モノローグ(以下M)「シンデレラが狙うは冷徹な王子様。彼女は、ハッピーエンドを迎えることができるのでしょうか」
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