溺愛まじりのお見合い結婚~エリート外交官は最愛の年下妻を過保護に囲い込む~

お見合い夫婦の距離感

小春(こはる)、健康に気をつけて。絶対に、幸せになるんだぞ」

 空港の一角で、家族との別れを惜しむ。
 流れる涙を隠しもせずに、鼻をすすりながら私を抱きしめてくる父の背に、そっと片腕を回した。

 この場には私、高辻(たかつじ)小春と夫の千隼(ちはや)さんの旅立ちを見送るために、お互いの父親が来てくれている。
 それから、普段は美味しい日本酒を求めて日本中を旅する気ままな生活をしている、私の祖父も駆けつけてくれた。

 厳格な祖父は、息子である父の顔をぐしゃぐしゃにした様子に呆れているようだが、それでも咎めはしない。

「うん。お父さんもね、元気でいてよ。それから、洗濯も掃除も後回しにしないで。お父さんったら、気を抜くといつも溜め込んじゃうんだから」

 声を震わせながら、それでも普段通りの明るさを心掛けて返す。お小言でも口にしていないと、途端に寂しさにのみ込まれてしまいそうだ。
 こらえきれずにジワリと滲んだ涙は、こぼれてしまう前に父の服にこっそり押しつけておいた。
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