拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
「さぁさぁ、みんな。そろそろ殿下の馬車が着きますから、並んでちょうだい」
 院長先生の声を受け、私は仕方なく職員たちが並ぶ一角の一番後ろに立った。
 王太子殿下の到着を待ちながら、ふと思い出すのはファルザード様のこと。私は三日前に彼から言われた『姉君と距離を置いてみてもいいのかも』というアドバイスを実践していた。
 もちろん、お姉様を避けるような極端な行動はしていない。そもそも、彼が言っているのは実際の行動ではなく、精神的な依存度についてなのだ。
 私はこれまでのように、お姉様の言葉をそのまま一から十まで受け入れるのを止めた。私自身がどう考え、どうしたいのかを優先して動く、意識するのはこの一点だけだ。
 言葉にするととても簡単そうなのに、私にはこれが存外難しい。だけど、さっそくひとつ自信に繋がる出来事があった。
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